Edit your comment 夢犯 MU HA N 1 修二 40歳 鉄工場の従業員 渓流釣りが好きな野島が鮎をごちそうすると俺を家に招いた。川魚など口にしたことがない俺は、まして、野島の手料理に半信半疑で卓についた。野島は自慢げに釣り場を話すが、釣り人の縄張りは人に話さないらしい。じゃあなぜ言うのかと聞くと、笑いを浮かべて答えなかった。俺は修二。野島と同じ鉄工場に努めている。 川の臭みというか、魚臭さがない。その美味さに、俺も四十の手習いで野島に手ほどきを受けたいと、食いながら頼んだ。成人祝いに釣り道具をもらって23年の野島。後に、渓流へ一緒に行ったが、向き合い方の格段の差を目の当たりにして俺に向いた趣味ではないとわかり、野島の手料理に呼ばれることがほとんどだった。 納品先から戻ると事務所前にパトカーがあった。事務所に入ると野島が話し合っている。 去年、近くで強盗事件があり、警戒と職場での防犯訓練をお願いしているのだという。話を聞きながら事務職の女性たちが忌まわしい事件を思い出しながら警察官の話に聞き入った。 連休となる日、警察官の協力を得ながら訓練を行うことになり10人ほどの職員が集合して始まった。監修の警察官がそこにいるだけでも緊張があり、誰がどの役割をするかも警察官が決めた。頭を覆うタイツと黒色で変身した強盗役に社長。「締め上げろ!」は警察の怒声。俺は壁にあるロープで野島を縛ることを命じられ、人質の女子職員の隣に座らせた。 月が替わって、俺は友人と飲んだ帰り道だった。細く狭い階段のあるビルから出てくる野島を見た。友人はコンビニでカップ麺を買うと小走りに向かったので、俺は取り残され気味にその階段の中を見上げていた。壁に貼られたポスターはきわどい下着の男の裸、女の裸。イベント告知やアダルトグッズの宣伝ポスター。「お前も買うのか?」「うぅ…」友人は笑いながら拳骨を俺の股間に打ち込んだ。 何もすることがなく、缶ビールを持って野島の家に行った。「突然かよ」困惑気味に少し待たされた。蒸し暑い夜、窓を開けても通る風はなく、扇風機が回るだけの音。野島はヨレヨレの綿パン一枚でいた。プシュー。喉を鳴らして勢いよく流し込む。 肴をつくると、野島が台所に立った。 扇風機の風に当たりながら部屋を見た。突然の訪問に慌てて押し込んだのかシャツの隙間にDVDがあった。寝そべって手を伸ばし掻き出すように取った。縄で縛りあげられ吊るされた男の画像。台所を気にしながら他にもあるケースを取ると、どれも似たようなものだった。 「こんなのしかないけど、まあ、摘まんでくれ」 四角い卓。俺の隣に壁によしかかるように野島は胡坐をかいた。 「野島さん、意外だったなぁ。普段はツナギだからガタイなんか気にもしなかった」 「ん?」 「ロープで縛ったときは見た目以上にガタイのいいって思ったけど、予想以上っすね」 「お前だってそうだろ。鉄骨担いでいりゃ筋肉は付くさ」 グビリとビールを飲んでテレビをつけた。時代劇の捕り物のシーン。 「時代劇って、鞭打ちに縛りとかけっこう拷問の演出がスゲっすよね。」 「訓練っとき、きっ・・つくなかったっすか」 「ん?」 画面に見入る野島のパンツが俄かに動き始めるのを俺は見逃さなかった。ムクムクとしたそれを隠そうとする野島の座り加減が悲しいほど素直で。シーンが変わるまで俺は何も言わず、ビールを飲み干し肴を平らげた。 SECRET SendDelete