Edit your comment 約束の時間だ。が、着替えに躊躇ってしまう。行けば彼とはまた次の約束になるし、でも、気持ちはそこにない。あの日、帰り道で立ち寄ったカフェに、あの人はいた。ときめいた。だから、近くに席をとったけれど気づかれないようにしていた。初心な一人芝居だと思っていたのに、帰りがけに、彼は目線を送ってくれてほほ笑んだんだ。常連なんだとわかったのは、後で来た人に「この時間の指定席」だと言われて、頷いたのを見たから。仕立ての良さそうなスーツと整った髪型。組んだ脚の逞しさに釘付けになった。後から来た人は胸ポケットからチケットを取り出した。ラグビーの試合だと言う。そうか、なるほど。行けないからあげるよと差し出した。優しい笑顔で受け取り、その別れ方がカッコよかった。チラッと見られた気がしたのは自分の意識過剰だったかもしれない。 約束の時間が来ているけれど、ズボンを履く足が上がらない。カフェに行けば彼は来ているはず。ああ・・・ SECRET SendDelete